細見浩先生のこと。

3月10日、版画家の細見浩先生が亡くなられました。享年81歳でした。
細見先生とは、毎年荒川版画美術館で一緒に展示をさせてもらっていました。
つい先日も、中標津町のギャラリー残日舎での先生の作品展を拝見して、改めてその作品の良さに打たれるとともに、オーナーの志道さんに、入院されていた先生が退院されて、元気になってきているという事を伺ったばかりでした。
またお会いできるとばかり思っていました。
心から、ご冥福をお祈りいたします。

2015年に荒川版画美術館で展示されていた、大作。素晴らしかったです。写真があまりよくないですが…。

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先日残日舎で見た豆本。

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道東の水辺の空気感がそのまま閉じ込められたような。
細見先生は旭川の出身で、教師の仕事で中標津に赴任してから、ずっとこの地の風景を木版画で表現してこられました。
初めて作品を見たのは、偶然訪れた佐伯農場でした。
それから何度かアトリエにお邪魔してお話を伺う機会がありました。
私が荒川版画美術館に展示させてもらってから、すこしづつ作品が広がり、はじめて版画の販売をするという事になったとき、額やエディションの事など、版画家としての心構えを教えて下さったのも先生でした。
いつも版画に対してとても誠実で、丁寧でやさしい語り口の中に確固たる厳しさをもって、笑顔で教えて下さった先生には感謝しかありません。
先生の木版画には、道東の大地に対する揺らぎのない愛情と敬意というようなものがにじんでいます。
また、先生独特の、木版のエッジで屹立した形と絵の具の粒子が折り重なって溶け合っているその感じが、この風景を表すのに最良のものであると言えるほど、山や木々や水や草花の存在の芯を捉えているようです。
これからも中標津の美しい風景に出会うたびに、細見先生の作品を思い出すでしょう。
また先生の作品を見るたびに、どこにいてもあの大地の透き通る風を感じるでしょう。
自分の立っている世界に敬意を払い感動し続ける心、それを厳しく表現し続ける事。本当にそれは並大抵の事ではないと思います。
もうお会いすることはできませんが、先生と先生の作品に教わった事はずっと私の指針としていこうと思います。
ありがとうございました。
下のリンクから、焚火社さんのサイトに飛びます。下にスクロールして「細見浩 木を彫る音に。」というバナーの「VIEW」というボタンをクリックすると、細見先生の制作風景と、ご自身の制作へのこだわりを語っている動画が見られます。
木と対話するように彫っている先生の姿。

http://takibisha.com/

下の動画は先生のご子息で音楽家の細海魚さんの音楽のPV。魚さんの静かな音楽に合わせて、先生の仕事をする手。