「620フォーエバー」 180cm×270cm 板目木版画 2004
今思えばすごいタイトルだな…。手前に、学校の近所の牧場からもらってきた牛の餌が供えてあります。
大学の卒業制作です。実物大全身牛版画シリーズ第1作目。
620は、大学2年の春休み、「田舎で生活してみたい♪」そんな理由でアルバイト情報誌で見つけた十勝の酪農バイトの牧場で出会った牛。
都会育ちの私には、間近で牛を見ることすら初めてだったのですが。
その牧場は200頭ほど搾乳している大きな牧場。ほんとうに、びっくりすることばかりの日々でした。
毎日たくさんの牛と接しているなかで、だんだん、牛にもそれぞれ性格や顔や模様にはっきりした個性があることに気づいていきました。
620は、とてもなつっこい牛でした。
こちらから近づいていくと、いつも顔をよせてきてくれました。なでると嬉しそうにしてくれました。ときどき大きな舌でべろんとなめてくれました。
黒目がちの、優しい瞳を持っていました。
たくさんの牛のなかから、いつも私は620を見つけ出しました。いつのまにか大好きになっていました。
620に出会わなければ、私は今こうして牛の絵を描いていなかったかもしれません。