作品NO.3 2004 木版画「620フォーエバー」
「620フォーエバー」 180cm×270cm 板目木版画 2004
今思えばすごいタイトルだな…。手前に、学校の近所の牧場からもらってきた牛の餌が供えてあります。
大学の卒業制作です。実物大全身牛版画シリーズ第1作目。
620は、大学2年の春休み、「田舎で生活してみたい♪」そんな理由でアルバイト情報誌で見つけた十勝の酪農バイトの牧場で出会った牛。
都会育ちの私には、間近で牛を見ることすら初めてだったのですが。
その牧場は200頭ほど搾乳している大きな牧場。ほんとうに、びっくりすることばかりの日々でした。
毎日たくさんの牛と接しているなかで、だんだん、牛にもそれぞれ性格や顔や模様にはっきりした個性があることに気づいていきました。
620は、とてもなつっこい牛でした。
こちらから近づいていくと、いつも顔をよせてきてくれました。なでると嬉しそうにしてくれました。ときどき大きな舌でべろんとなめてくれました。
黒目がちの、優しい瞳を持っていました。
たくさんの牛のなかから、いつも私は620を見つけ出しました。いつのまにか大好きになっていました。
620に出会わなければ、私は今こうして牛の絵を描いていなかったかもしれません。
作品NO.2 2008 木版画「388乳(搾乳後)」
作品NO.1 2007 木版画 「388正面図」
「388正面図」 2007 133cm×69cm 板目木版画
388は以前勤めていた牧場にいた牛です。 388の本名は、ポーテージ スタンレイ ティー。誕生日は1996年7月6日。私が出会ったころは、もう10歳にもなる、乳牛にしては長生きの、その牧場でも長老の牛でした。
牛にも人間とおなじように、いろんな性格があるわけですが、388は、いつもどっしり構えた、長老らしく動じない牛でした。
私が近寄っても、「ああ、また来たのね」という視線をチラッと投げて、一応においはかいでみるものの、またすぐ反芻を始める、そんな牛。私がなでたりさすったり話しかけても、あんまり喜んだりもしないけど、拒みもしない、いつもそばにいることをおおらかにゆるしてくれる。
よく牛舎の388のところに行きました。
言葉は通じないけれど、388はただ、その黒くて大きい瞳で見ていてくれました。
それが、私には、なによりありがたかったものです。
部分
シナベニヤに彫刻刀で彫って、ばれんで和紙に刷っています。