東一条ギャラリー、「牛の瞬き」展終了しました。

5月18日をもちまして、東一条ギャラリーで開催して頂いた、冨田美穂 牛版画展ー牛の瞬きー無事に会期終了致しました。

思えば大学卒業後北海道に来て、作品を佐伯農場荒川版画美術館に飾ってもらってから初めて個展という形で展覧会をさせて頂いたのが、2010年当時できたばかりだった東一条ギャラリーさんでした。佐伯農場の佐伯雅視さんが古い商店をリノベーションして、羅臼のステンドグラス作家の浅沼久美子さんが中心になって企画運営してきたこちらのギャラリーにはいままで本当にお世話になってきました。

2010年の最初の個展の時、酪農ヘルパーでフルタイムで働きながらできる時間で作った「388全身図」。ギャラリーの狭い階段をなんとかすり抜けて、122㎝角の大きな作品をあの暖かい空間に飾った時の誇らしさを今でも思い出すことができます。

あれから15年の時が過ぎて、大作を含む新作メインの個展をこの場所で本当に久しぶりに開催させていただきました。

2010年の時よりずっとたくさんのお客様においでいただき、本当に15年でずいぶんたくさんの方に私の作品を知っていただいた事に感謝の気持ちでいっぱいでした。
近隣の町々や、本当にびっくりするほど遠くからわざわざ見に来ていらっしゃった方もいらしたり。
ジェネティクス北海道さんの「サイア」で宣伝して頂いた効果も絶大で、たくさんの酪農家さん、酪農関係者の方々にお越しいただき、「いつもサイアを楽しみにしているよ」と言って頂いたり、牛の事をいろいろお話したり、本当に続けてきて良かったと思えたし、嬉しかったです。
また常連のアート好きな地元の方に専門的な質問をしてもらったりする時間も貴重なものでした。

また今回は、ギャラリーの入り口が階段であることで、お越し頂けなかった方が私が知っているだけで2組いらっしゃいました。
せっかく楽しみにしていただいていたのに本当に申し訳なかったです。
今までここで展示した時よりずっとたくさんの方に知って頂いた事、ありがたいと同時に展示する場所によって見られない方がいることまで思い至らなかった事に反省もしました。
今回は私にとって大切な場所である東一条ギャラリーで再び展示ができた事は、ひとつのターニングポイントだったように思います。
また道東でバリアフリーでどんな人でもアクセスできる場所でも展示できるよう、続けて考えていきたいと思います。

私にとってはホームであるこの場所で再び個展を開くことができて本当に、有難かったです。
また何かここでしかできないおもしろいアイディアが浮かんだ時、戻って来れたらと思います!

この展覧会を見に来て下さった皆様、気にしてくださった皆様、お世話になった東一条ギャラリーの浅沼さん、佐伯農場の佐伯さん、在廊をお手伝い頂いたお二方、本当にありがとうございました。
そして改めて、モデルになってくれた牛たち、いつも快く送り出して下さる職場の皆さん、支えてくれる家族にも。心からありがとうございました。

この地で生活し、制作し続けてきた15年を糧にまた、続けていきたいと思います。


最後にタイトルの「牛の瞬き」について。

牛の作品を作り始めてから23年ほどの間に作ってきた作品を振り返った時、すごく覚えている牛もいれば、どんな牛か忘れてしまった牛もいました。そして描いてきたほとんどの牛はもうこの世になく、私ももうすっかり若者ではなくなり、身近な子供たちはすっかり大人になり、世の中もずいぶん変わったように思います。
彫っている時の永遠に続くような時間、彫られた牛の面影がしばしこの世に残っていくこと、でもやっぱり生身の身体は本当にあっという間に交代していく、その本当にある意味一瞬のような、でも確かにゆるぎなくそこにあった命を、たとえ忘れてしまうとしても、無駄かもしれなくても、記していくことが私の人生なんだな、などという考えが去来した上でのタイトルでした。まばたきのような一瞬とも、記憶や遺伝子や物質などを受け継ぎながらこの先もずっと続いていくともいえるような私たちの命。
この先もずっと制作を続けていったら、また15年後、どんな作品群が生まれて、どんな意味を持つのか、それが自分でも楽しみだな、と今は思っています。

新作の1305正面図
手前の作品も新作の1715
ステンドグラスの扉と
今回は一日一牛も展示しました
佐伯農場グッズも置かせてもらいました
暖かい光の室内
入り口に飾っていたのは学生の頃作った木口木版、私が牛を好きになるきっかけの牛620
ありがとう!